2019年


シンポジウム「子どもたちとともに」

 

2019年726 () 14:3016:30

 

那覇市緑化センター

参加無料

言語:日本語・英語(通訳あり)

 

子どものための舞台芸術を創作することについて、子どもたちに舞台芸術を届けることについて、

講師それぞれの経験も含めながら共有し、議論します。

 

パネリスト:

キム・ウォーク(韓国)ほか

 

ファシリテーター:

竹谷多賀子(同志社大学 講師・創造経済研究センター 研究員/日本)

 

 

2019年度沖縄文化芸術を支える環境形成推進事業

主催:一般社団法人 エーシーオー沖縄

支援:沖縄県、公益財団法人沖縄県文化振興会


わした島こどもアートシンポジウム
『子どもたちとともに』

 

726日、那覇市緑化センターでシンポジウム『子どもたちとともに』が開催されました。韓国の演出家であり教授のキム・ウォークさん、NPO法人沖縄伝承話資料センターの大田利津子さんにパネリストとして、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの竹谷多賀子さんにファシリテーターとしてご参加いただき、子どもたちのための芸術を創造することについて、またそれを届けていくことについてお話しいただきました。

 

まず、キム・ウォークさんには、キムさん自身の児童青少年演劇に関わる取り組みと、それを可能にした韓国政府のサポートについてお話をいただきました。

 

 

私がアシテジ(国際児童青少年舞台芸術協会)の韓国ナショナルセンターの会長に就任した1980年代、韓国の児童演劇は非常に質が低かったにも関わらず、その量が信じられないほど膨張していました。その状況を改善することが急務と考え、いくつかの方法を考えました。

 

まずひとつめは、「ソウル児童演劇賞」制度を作って児童劇団の間の競争心を刺激するということでした。年間にソウルで上演される作品を5名の審査員が観劇し受賞作品を決めるというもので、1992年に初めて実施されました。

 

ふたつめの取り組みは、1993年に立ち上げた「ソウル児童演劇祭」です。「ソウル児童演劇賞」を受賞した作品を集めたフェスティバルで、1995年からは優れた国外からの作品の招聘を始め、「ソウル国際舞台芸術祭」となりました。

 

みっつめは、1994年に創設された韓国唯一の国立芸術大学である韓国芸術総合学校の中に児童青少年演劇専攻を設立し、大学院の人材の要請を始めたことです。これによって、児童青少年演劇を学ぶ学生以外にも、多くの新しい優れた演劇人が児童青少年演劇に参加し始めることになりました。

 

よっつめは、2002年の「アシテジ世界大会・フェスティバル」のソウルへの招致でした。アシテジが3年ごとに開催するこの世界大会が初めてアジアで開催されたのがこのソウル大会でした。世界12ヶ国から17本の作品と、韓国から12の作品が参加し、韓国の観客や関係者に驚異的な衝撃と感動を与えました。これは、私の10年にわたる努力の集大成ともいえるイベントでした。

 

こういった努力が成果につながった重要な促進力は、韓国政府の支援制度でした。韓国政府の文化芸術のための予算は、金大中政権(1998-2003年)によって破格的に政府全体予算の1%にあげられた後、現在は1.5%を超えています。

 

現在も韓国では特に若い芸術家のために多くの助成金が割り当てられており、たくさんの活動が活発に行われています。文化芸術界のための予算の中で演劇分野にかなりの予算が配分されている最も大きな理由は、演劇人たちが政府に対し支援の要求を絶えず求めてきたことにあります。韓国のことわざに、「泣く子どもに乳をより与える」というものがありますが、まさにその通りです。闘わずして自然に与えられる助成金はない、といっても過言ではありません。

 

ーーー

 

次に、大田利津子さんによるプレゼンテーションでは、ご自身のライフワークである沖縄の民話の収集と読み聞かせの活動をベースに、沖縄の歴史を絡めながら、いかに子ども時代の豊かな芸術体験が重要であるか、そしてそれが失われる危険性についてお話いただきました。

 

 

1945年、米軍と日本軍の戦場となった沖縄では多くの県民が巻き込まれ命を失いました。生き残った人々はやがて捕虜収容所の中で「ヌチヌ グスージ サビラ」(命のお祝いをしましょう)と、楽器(カンカラ三線)をつくり、衣装をつくり、歌を歌い、踊りだし、演芸大会を行いました。琉球王国時代以来、貧しさや重税、自然災害に苦しんできた沖縄の人々ですが、その生活の中にはいつも歌が、踊りが、祭りがありました。その行き着いたところが、この終戦直後の「ヌチヌ グスージ サビラ」だったのだと思います。

 

現代の沖縄にも、たくさんの芸能活動があります。しかし、子どもたちの生活を見ると、電子機器の中で育ち、人間の生の声で伝承されてきた文化が失われています。子守唄、遊び歌、手遊び、昔話の語り、どれも声で伝承されてきたものです。子どもたちは、人間の声の中で育ってきました。

 

私は大学生の頃から、沖縄県全域で民話(昔話)の採話調査をしてきました。現在私が所属する沖縄伝承話資料センターには76,000の民話が音声で保存されています。琉球王国から沖縄県になった(1879年)後の沖縄文化蔑視、沖縄文化否定、方言撲滅運動、沖縄戦、戦後復興、その後も続く方言撲滅活動、米軍統治、本土復帰(1972年)といった時代の激動の中で、調査を始めた1973年当時、沖縄のお年寄りたちは民話を覚えてはいないだろうと誰もが思っていました。調査対象の方々のほとんどは明治生まれでしたが、彼らは「この話をするのは何十年ぶりだよ」といいながら、豊かに語り出したのです。

 

大学卒業後、子どもの本関係の仕事についた私は、2000年以降読み聞かせ推進が言われ始めた頃、その意味に気づきました。子どもの時に出会った物語は、それを聞いた場、語った人、その人の声、その時の精神の安定、高揚と共に、記憶に残るのだと。彼らは、人間の声を楽しみ、癒され、生きて来た人たちでした。

 

であるのならば、芸能の島と言われる沖縄も、生活の中の生の声が失われたら、芸能を伝承することも、楽しむことも、生み出すことも、生きる糧にすることも難しくなっていくのではないでしょうか。

 

―――

 

お二人のプレゼンテーションの後、ファシリテーターの竹谷さんを中心に、まずはパネリストのお二人と、そしてご来場いただいた皆様を交えた意見交換が行われました。

 

 

キムさんの「沖縄のアイデンティティを守っていかなければならない」というコメントを受けて、大田さんからは「沖縄の昔話は唐、台湾、高麗、アジアから伝わった物語が、国頭から与那国まで、それぞれの方言で伝えられています。方言の復活に取り組んでいますが難しいです。もし方言がなくなり、文化がなくなったら、沖縄も東京も同じになってしまうかもしれません。キムさんの話を聞いて、行政に声を上げることの大切さを感じました。子どもたちのためにお金をもらって使っていけたらと思います」とコメントがありました。

 

竹谷さんからの、日本では財政難もあって文化に予算がつかない状況があるが、日本の10倍の文化予算を持つ韓国の視点から、何かアドバイスはないか、という質問に対し、キムさんからは「“Fight”。日本の構造を知らないので難しいが、何かきっかけがあるはず。韓国では力のある国会議員などと関係を築きお願いをする。時間はかかるが良い関係を作ることが重要です。喋るだけでなく、行動を起こさなければなりません。民間も、政府からの働きかけで動いてくれます」と返答がありました。

 

その後、アジアにおける伝統の継承とアップデートについて、聴衆も含めて議論が行われました。キムさんからは「伝統の活用については話すだけでまだ実戦ができていない。アジアにとって大きなタスクであり、伝統そのものではなく、あたらしい作品として作っていくことが重要でしょう。若者に興味を持ってもらうエレメンツ、方法を見つける努力が必要です。感情が子どもたちを感動させます」とコメントがありました。

 

 

シンポジウムには、「りっかりっか*フェスタ」のために集まった東南アジアからの児童青少年演劇関係者も多く参加しており、このテーマについていくつかのコメントがありました。

 

マレーシアの参加者「ペナンの伝統的な人形劇についての本を、若者向けに出版しました。若者に関心を持ってもらうために、デザイン性を高め、イラストなどでおもしろいものにしました」

 

フィリピンの参加者「昔は一緒だった、子どもと大人のスペースが隔離しています。物語の継承は自然に行われるべきもので、クリスマスなども毎年来て少しずつわかっていきます。空間を共有することが大切だと思います」

 

フィリピンの参加者「関係づくり、友達づくりが大事でしょう。自分の地域でも、市長との関係づくりを進めています。反応はそこから。フィリピンで、大田さんとおなじように神話の生き物の話を収集していて、伝統とテクノロジーの融合など、帰国したら共有したいと思っています」

 

最後に竹谷さんから、伝統的な資源をどう継承していくかは共通の課題であり、そのためには包摂的なコミュニティが必要になる、こういった対話を続けていくことで社会づくりの活動が広まることを願っている、関係を作っていって、次につなげていきたい、とまとめがありました。

 

ご登壇いただいたみなさま、ご参加いただいたみなさま、そして通訳のみなさま、ありがとうございました。

 


冬のわした島こどもアート
『うたたいもーたい うちなーぬわらべうた』

 

2019年2月23日(土)南城市のあおぞらこども園にて「うたたいもーたいうちなーぬわらべうた」を開催いたしました。当日は多くの方がご来場下さり、沖縄の昔ばなしに耳を傾けたり、歌や踊りを楽しんだりと、みな様と一緒に楽しいひと時を過ごすことができました!!

イベントに足を運んで下さり誠にありがとうございました。

 

ご来場いただいた方からステキな感想文をいただきましたのでご紹介いたします。

 

「沖縄の歌や踊りを子どもから大人まで楽しめました。(70代女性)」

「とても楽しい内容でした。若い親だどなかなか沖縄のわらべうたを歌ってあげられないので、私も勉強になったし、子どもも喜んでいました。(30代女性)」

「とってもいい時間でした。娘は踊りっぱなし。こんなステキな企画、またぜひぜひです。ありがとうございました。(30代女性)」

 

心温まる嬉しい感想をありがとうございました。

またみな様に楽しんで頂けるようなイベントをお届けできるようスタッフ一同邁進してまいります。

 

ご来場いただきましたみな様、出演してくだっさったみな様、

ご協力頂きましたコーディーネーターのみな様、あおぞらこども園の先生方、みな様本当にありがとうございました。

感謝申し上げます。